BLOSSOM通信

最近の若年者傾向と教育面で考えたい事

最近の若年者傾向・教育面での注意点というテーマで、お話する機会がありました。
 
〇「クライアントに謝罪に行って来い!」と指示したら、何も悪びれずことなく、メールに絵文字m(–)m を入れて満足げにしている若い社員。
 
〇「なぜ、アポの時間に遅れるんだ!?」と訊くと、「アラームがアポの時間に鳴ったんです」とあわてもせず平気な顔の若い社員。
 
皆さんの周りは大丈夫でしょうか?
笑い話のようなこれらの話は、実際にあったことです。
「さすが~、ゆとり世代!!」笑ってばかりもいられない現状ではないでしょうか。
 
さて、ちょうど私自身は平成の初期のいわゆる『いい時代』に営業職についていました。
『ハングリー』に仕事に向き合えば、それなりに結果が返ってくると実感したものです。
時代はもうふた昔も進んでいるのに、どこか『ハングリー精神』を美化し、自分の部下にも求めています。
 
「なんで部下はしごとしないかなあ」「若々しく仕事にぶつかってよ」とぼやきながら、一番言いたいのは
「ハングリー精神が足りない!!」なのです。
 
ですから、
「結局やる気がないんだよ、最近の若いもんは!」とか
「性格があまちゃんなんだよなあ」とか
「道徳心もないし~」とか
 
気付いてみるとハングリー精神を求めているのではなく、どんどん矛先が“人間性の否定”に向いてしまっているのです。
 
これは、怖い過ちです。モラハラになりかねません。
 
今から20年前は、将来の夢に向かって頑張ることができました。
「2年後には、間違いなくこうなるんだから、そのために今、頑張れよ!」と上司に励まされ、明るい将来を夢見ていました。
 
ビジネスの教育現場も、それを反映し、ビジョンに向かうコーチングがもてはやされていた記憶は、まだまだ鮮明です。
 
そして、部下にとっての“将来の夢”は上司にとっては大きな“信頼と期待”でした。
 
最近の若年者の育成は、この“信頼と期待”を区別して考える必要があります。
 
期待は、将来の夢・目標を持たせてやることです。
信頼は、部下の人格を信じ、若者が体験してきたトラウマ的な思い込みを解除する手助けをしてやることなのです。
 
実は、若年者は別名『Web社会の申し子』です。
情報は集めることが上手ですが、彼らの解決策は“選択”というクリックです。
時間やスケジュールはスマホが管理し、アラームで知らせてくれます。
友達だってフェイスブック等を通して100人も200人もいるのです。
 
すごいことが出来る子たちですが、最大の弱点は
『面と向かって言えない。自分のメッセージを受け取る側を想像する力が低下』している事です。
 
メッセージの意味を受け取るのは、相手です。
その相手の反応を見て、今どうするか、次にどうするかを私たちは考えてコミュニケーションをとり、人間関係を創ります。
 
そのリアルな経験・体験が少ないのが若年者たちでしょう。
だから、相手の反応を予測して自分の言動をかげんすることが不得手のようです。
 
 
札幌市の若年者の雇用促進事業に関わる機会があります。
彼らは確かに頼りなく、のほほんとしていて、危機感が無い様に見えます。
将来に何の悩みすら無いようにも見受けられます。
そして、学歴があり、頭も良いのです。
 
ところが、教育現場でこちらがエネルギッシュに伝えても、空回りしているようにも思えます。なぜでしょう?
 
実は、エゴグラム分析(心理テスト)をすると、彼らの描くグラフは非常に類似しています。
両親が愛情よりも常識や理性で育てた背景が見えてきます。
育てられた側も、愛された感がありません。
彼らは、ある一定のレベルまでは、ほとんどなんでも順応し対応します。出来てしまうのです。
ですが、やりがいとか自分らしさとかをそこに感じることが出来ないのです。
 
天真爛漫で物怖じしない面と、従順で引っ込み思案の面が、同じレベルで見え隠れする個性・性格です。
 
優しさが特徴ですが、自由でいたいという優しさなので、ルールや常識や責任感を考えての思いやり的な優しさではなく、
子供っぽい甘えや、嫌なことから目を背けたいということがベースの“優しさ”を持っている子が多いのです。
 
上司は部下の育て方が難しいと嘆きたくなりますが、
若者は彼らなりに、見通しの悪い環境の中で嘆き方も分からず育ってきたのかもしれません・・・。
 
さてさて、結局は年齢の差があるだけで、同じ人間であることには間違いありません。
 
ハングリー精神が足りないと言って、人間性のせいにせず、同じ人間であることを信じてみることが、育成の基本にありそうです。
 
リアルの体験をさせる機会をふやし、“人”を感じさせることが成長と育成の第一ステップでしょう。
人の反応をどう予測するか、その人の反応にどう対処・対応するかの訓練が重要だと思います。
 
ふと気が付くと・・・
便利な世の中が人の能力を覆ってしまう、怖い時代かもしれません。
 

2013.6.20