BLOSSOM通信 
午前4時、6月の朝は夜明けが早い。
明るくなり始めている中、愛犬キックが私の横で、小さく「く～ん」と声をあげる。
いつものようにトイレなのだろうと、抱き上げて連れて行くと、腰が砕ける感じですぐ座ってしまった。
なんだか･･･、違う…
そっか～、抱っこして、話をしようね…
どう？闘病生活は、大変？
最近、年とってきたよね。
お母さんを追い越しちゃったんじゃない。
足も弱ってるんじゃないの？もぉ、だらしないなあ。
でもさあ、きぃちゃんは、随分、ママを助けてくれたね。
大好きで大好きで、たまらないよ！
13年かあ、思い出しちゃうと…なんで涙が出るのかなあ。
きぃちゃんをさ、すっごくすっごく幸せにしてあげたいんだよね。
ママに、元気をくれた分、お返ししないと、借りがあるみたいでさ、やーだ。
楽しくておかしいこともたくさんあったよね。
きぃちゃんのおかげで、おばあちゃんも、一人で家にいても寂しくなかったみたいだしね。
おかげでデブにされちゃったけどね。アハハ。
いつもどんな時も、きぃちゃんはママのそばで、ママがして欲しいことをしてくれたよね。すごい子だねぇ。
寝坊したい時は付き合ってくれたし、風邪引いて寝込めば、一緒に寝てくれたし…『以心伝心』ってヤツ？！
ふわふわの毛が気持ちよくて好きだよ～。
この毛に顔をくっつけて、結構泣かせてもらったもんね、あったかくて、嬉しかった…
そういえば、こんな風に、赤ちゃん抱っこさえせてくれるの、久しぶりだねぇ。
ずっとママの赤ちゃんでも、よかったんだけどね。
ごめん、涙、出る…
ママの涙も覚えておいてよね…
覚えておくよ、全部全部
5月はママがすごく忙しそうだったから、迷惑かなと思って、頑張って元気にしてたんだけどさ…
なんか、やっぱ疲れてきて、そろそろゆっくりしたいかな、って…
『ママの腕の中で死ぬよ』って約束させられたじゃない！？
だから、ちょっと声かけてみたんだ…
ママにしてみたら13年かもしれないけどさ、僕にしてみたら結構長生きしてるんだよ。
おばあちゃんも僕に会いたがってるみたいだし、そろそろいいかな…？
僕もママが大好きで大好きで、たまらない。
運命の巡り逢いだよね、だから『虹の橋』で待ってるからさ。
だけどさ、ママもしっかり生きていないと、『虹の橋』で会えないんだって。
いぃんじゃない、お互いに大好きで、優しい気持ちになれて、信頼できてたんだから…
ごめん、つらいやぁ…でも苦しんでないから、安心して。
今日は時間がある日でしょ？
赤ちゃん抱っこしてもらって、ゆっくり話せてよかった…ごめん、でもキスする元気ないかも…いいよ、勝手にしてくれるなら…最後のキスだね…
ママの涙…しょっぱいかも…それと、幸せだったからね！
午前5時18分
約束通り、私の腕の中で、私のあふれる涙にぬれながら、大好きな私のキックは『虹の橋』を目指して出発することを決めたようです。
頼りないくらい、力の入らない彼の身体を抱きしめて、一方的なキスもしました。
手のひらで感じていた彼の鼓動が、感じることができなくなり・・・・
頭が割れるほど、涙がでました。
「ごめん…」･･･そんな言葉しか出てこなくって…
情けないけど、私の気持の支えだった･･･君…
犬が嫌いは人にはわかってもらえないかもしれませんが･･･支えてくれたわんこです･･･
そして、
このブログは涙つきですが、お骨になった彼には、明日から笑いかけます。
天国のほんの少し手前に『虹の橋』があります。
この地上で誰かと愛し合っていた動物たちは亡くなるとそこに行きます。
そこには動物の神様がいて、私のきぃちゃんも抱きしめてもらっていることでしょう。
『虹の橋』はお陽様が降り注いで、みんなが幸せに過ごせる場所です、そう、まるで、過ぎた日のように痛みも苦しみも無く・・・
そして、そこで、彼は私を待っていてくれます。
そして、一緒に『虹の橋』を渡って天国に行くのだそうです。
私の愛するキックは、病気に負けたのではなく、体力が限界、力尽きてしまったようです。１３歳でしたから、人間では７０歳くらいの歳です。
最後まで、頑張って、病気とは闘っていたと思います。
東麻布動物病院の院長先生や奥さんをはじめ、同じ難病を克服したワンちゃんのお母さんにもお会いして応援してもらいました。
私の周りのたくさんの人からも、心配や思いやりをもらいました。
いつもいつも胸の奥と目の奥が熱くなりました。言葉で上手く言えないけど、感謝です。
最後の最後まで、たくさんの方の愛に包まれて、キックは生涯を閉じました。
それなのに･･･、そうだから･･･、あんまり悔しいから、今日だけは私は泣きます！
明日は目が腫れてブスだと思います。仕事はブス顔で行くしかないです。
そこまでアイツは考えてなかった、浅はかな男です！まっ、いいか。
きっくぅ～！だいすきだよ～♡ありがとぉ～♡
･･･これが最後の、私の愛犬キックの近況報告です。
お付き合いくださり、ありがとうございました。
２０１２．６．６
