今年度の芥川賞を受賞した又吉直樹の『火花』が売れている。
お笑い芸人が書いたことも、興味をひいたが、書き出しから巧みな言葉の使い方でどんどん引き込まれていく感じがした。
最高に売れている本なのでは!?と思ってしまうが、
日本で一番売れた本は、
『窓際のトットちゃん』あの、黒柳徹子の自叙伝でもある、あの本だ。
非常に個性的で、“変わっている”トットちゃんと、それを取り巻く暖かい人たちの話だ。
先日テレビ番組でトットちゃんがでて、
『今自分がこうして入れる理由』という形で、
当時の話、トモエ学園と校長先生のことを語っていた。
普通の小学校を退学になったトットちゃんを迎え入れてくれたトモエ学園の校長先生は、
いつも
「君は本当はいい子なんだよ!」と声をかけてくれた。
そのたびにトットちゃんは
「はい!私はいい子です!!」とさらに胸を張って答えた。
「君は本当はいい子なんだよ!」
この一言があったから、今の自分、黒柳徹子がいる、とトットちゃんは語った。
人を褒めるポイントは、難しい。
なぜなら、私たちは誰かをほめるときに、他の誰かと比較して優劣をつけることで褒めてしまうことがあるからだ。
又は、勝手な基準を設け、その基準での上下で褒めてしまうことがあるからだ。
「徒競走で一等を取ったのは、スゴイね!」
「算数のテストで95点も取れたのは、大したもんだ!」
「その若さで、〇〇が出来るなんて、素晴らしい!」
等々だ。
そういう一方で、『褒める』ことは、特別扱いすることも、大事なのだ。
「うちの子たちは卵料理が大好きなの!だからそれぞれのお誕生日は卵料理を作ってお祝するのよ!
長男の誕生日には、あの子が好きなオムレツ!
二男の誕生日には、この子が好きな目玉焼き!
長女の誕生日には、あの子が好きなスクランブルエッグ!」
その子その子に合わせた、その子が喜ぶものをプレゼントする(ほめる)のが大事なこと。
3人の誕生日に卵料理=ゆで卵を大量につくってお祝いしても、誰も喜ばないかもしれない。
これが特別扱いをして褒める、だ。
トットちゃんのいたトモエ学園の運動会は、いつも一等賞になる子が決まっていた。
その子は学校で一番体が小さくて、しかも障害を持つ男の子だ。
この子が一等になれるような、この子にとって有利な競技を作っていたのだ。
小さな筒をくぐるとか、網を抜けるとか。
トモエ学園の運動会の日、この子はヒーローになる。
幸せな気分が、自己肯定感を持ち、そして自信になっていく。
『自信』とは、自分の弱点を認識し、そこを嫌がらず、目をそらさず、弱点とうまくつきあえるようになることだ。
個性は、素晴らしい所だけで出来上がるものではない。
“ちょっと人と違っている”から個性なのだ。
おそらく、背が高すぎる事や、へんな顔をしていることや、発想がぶっ飛んでいることなど、“自分としては少々困っている問題”を受入れてうまく付き合えるようになったとき、
それが『個性的』となる。
褒め方を間違えず、個性に気付かせ、個性を伸ばせる、オトナになりたいものだ。
2015.8.18