BLOSSOM通信

時間が止まるとき

目の奥が、勝手に熱くなって、涙が出てきます。
悲しい場面を想像するわけではないのですが、戻る事のできない過去に対して悔やみきれない後悔が次から次へと頭を持ち上げてくるのです。
じわじわと溢れる涙のせいで、頭の芯からずきずき音をたてて痛みが増します。
 
きっと時間は誰にも公平に流れているのでしょうけれど、私の周り半径20センチくらいは、時間が止まりました。
 

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生命保険会社に勤めて10年を過ぎた記念に、犬を飼いました。
本来、犬好きではありません。
たまたま仕事で行ったペットショップで、運命の出会いをしました(笑)。
『目が合ってしまったぁ~!!』という、大きな勘違いの、運命です。
 
そのまま買い物用のバスケットに入れた犬を持たされ、お金は後で良いから、と言われ、その日一日、わんこは私の車に乗って、共に仕事をしたのでした。
 
1999年10月18日生まれのダックス君。まだ生後2ヶ月、雪が降り始めた12月のことでした。
 
それから13年、娘が社会人になり家を出て、息子が出て、母が入退院を繰り返し、そして亡くなり、いろいろあった13年を、このダックス君は、ただただ私の傍らで、可愛い目をして、付き合ってくれました。
 
泣いたり、怒ったり、笑ったり、落ち込んだり、悩んだり・・・どんなときも離れず見ていてくれた愛犬です。
 
その子が、3月のある日、突如、病気が発見されました。
難しい病名で・・・簡単に言うと、貧血状態で、
「あと4日遅かったら、だめだったかも」と言われるくらいの状態でした。
そのときも、
どこか様子がおかしくて病院に連れて行ったのではなく、月に1回のシャンプーのために預かってもらった日です。
私はそのあと安平まで仕事に行き、不在時の着信で、愛犬の状態を知りました。
 
ほんとにあまりに突然で、何がどうなっているのか、分からなくなるものです。
 
私が見落としていた事はなかったのか、何か訴えてなかったのか・・・そのあとは、どうして気づいてやれなかったのかと、自分を責めるしかありません。
 
ドクターが、
「今日は注射もしたし、入院しても、連れて帰っても良いですよ」と言うのですが、その選択の裏には、『もし万が一の事があるとしたら、自宅でも病院でもありうる』ということでした。
赤血球の数値が下がり、極度の貧血状態で、本来なら立っているのもやっとの状況。あと1~2数値が下がったら、輸血しか方法がないほどの状態だったのです。
輸血をしても100%回復すると言う確証はもちろんないのです。
 
犬だから、言葉を言えるわけはありません。
痛いとか辛いとか言ってくれたら、どんなに良いか・・・
『明日は輸血になるんだ・・・』小さな覚悟をしつつ、一緒にいる日が、この“一晩”で終わらない事を祈るしかありませんでした。
 
一時は少し上向きかけた赤血球の値も、またすぐに下降し、結局輸血をしました。しかも今度も私が泊まりがけの出張をする日にぶつかってしまいました。
 
最悪!残酷!
 
この10日間、何をどうしたのか思い出せないくらいの毎日でした。
定期券は落とす、銀行のキャッシュカードは置き忘れる、仕事の最中(講義中)だけは意識があった、という状態です。
 
おかげさまで輸血を含む病院の手厚い治療と暖かい励ましに助けられ、愛犬は現在少し良い状態をキープしています。(明日のことはまだ予断を許しませんが)
 
毎度の事ながら、1日=30時間的な仕事をしていた私に対しての、愛犬からの警鐘だったかもしれません。
ゆっくり物事を考えずに行き当たりばったりで全て受入れる決断をしてしまう私に、もっと落ち着いて、頭を冷やして考えて、というメッセージだったかもしれません。
 
もしかしたら私の変わりに病気になったのかもしれません。
 
大切な人(ペット)と一緒に居られる時間を、大事に過ごし、そして創る努力は大事な事です。
 “今”は今でしかなく、後からでは取り返しのつかない“今”なのです。
そしてその“時”が自分の活力なのですね。
 
今また時間が動き出しました。
 
2012.3.23