◆コロナで何が変わったのだろう?
「コロナ禍で働き方が変わり・・・」というフレーズをよく耳にするが、働き方改革自体はもうだいぶ前から進められていた。
なかなか進まず・・・という状況だったものが、コロナの影響で良くも悪くもスピードアップした、というのが現実だ。
リモートワークも、『やればできるじゃん』ということで、一気に、視点は「それは必要だったのか?」という今までとは180度違う見方をするようになっている。
出張は?飲み会は?満員電車の通勤は?長時間の会議は?なども同様だ。
そして、人間関係は?コミュニケーションは?服装は?名刺交換は?席次は?ビジネススーツは?・・・とカテゴリーが【ビジネスマナー】にも向けられているのが今かもしれない。
今までのビジネスシーンでは、「存在していた方がいいから」「共有できるルールがあるとよいから」とビジネスマナーが基本として重宝されていた。
言葉使いも、挨拶の仕方も、お辞儀も、電話応対も、名刺交換も、・・・。
初めて社会に出て何もわからない年代の人たちにとっては、ビジネスマナーを学び、身に着けるというのは、実は社会人としての自覚と自信につながる第一歩なのだ。
スーツもワイシャツやネクタイや小物のそろえ方を教わると、まずはその通りにしておけば何とか一人前っぽく見える。
言葉遣いや礼儀も、意味はよくわからなくても「ルール」「アニュアル」として覚えれば、ある程度相手が誰でも、緊張せずに話ができていく。
いいじゃないか!ビジネスマナー!!
◆ビジネスマナーは古い?堅苦しい?ってホント?
そう考えながら私はもう20年以上もビジネスマナーインストラクターを続けている。
ところが、ビジネスマナーの基本とルールが、最近通用しなくなりつつあるのも肌で感じていた。
「“こうあるべき”というビジネスマナーが、若者にとって堅苦しすぎて、早期退職につながるんです。」と言われたことがあり、思わず苦笑した。
内心『上司ができていないのに、若者ばかりに求めるからだろう』と思った。
「自由」とか「自分らしく」とか「男女平等」という言葉の意味の破棄違いによるのか、
「勝手に」「周囲とのバランスは無視して」「家でも職場でも同じでいい」というように受けて止めているのではないだろうか?
自分のモチベーションを保つにも、ビジネスマナーに含まれている諸々の“武装”は不要ではない。
一日も早くビジネスシーンに慣れて自分の能力を遠慮なく出していくためにも、ビジネスマナーは必須だ。
ビジネスマナーは社員を育て、企業のクオリティを上げる!
マナーを教えることを仕事とし、会社を設立し、20年以上数多くのビジネスパーソンとかかわってきた。
自分の想いにぶれるところはない。
◆見直されるべきビジネスマナーとは何か
先日、朝日新聞の「論の芽」で【コロナでマナーは変わるのか?】的な意見が交わされていた。
東大クイズ王の伊沢拓司氏や、#KuToo運動の石川優美さんの意見を読まれた方も多いと思う。
まず、紙面は「コロナ禍でビジネスマナーが見直されている」とあるが、私はコロナのせいだけではないと考えている。
少なくとも私が教えてきた期間にも、見直しした部分はたくさんある。
携帯電話、メール、服装もクールビズや女性の進出も目覚ましく、少しずつ変わっている。
最近はリモート会議のマナーも聞かれることが多い。
伊沢氏は「なぜマナーがあるのかという理由を考えて、見直していくのが大事」と語っている。
当たり前のことだし、重要。賛同できる。
一方、「不要だと思うビジネスマナー」の有無をネットアンケートで集計すると、7割の人が「ある」と答えたそうだ。
不要なマナーランキング(ビズヒッツの調査に基づく)
1.名刺交換
2.上座・下座の席次ルール
3.言葉遣いや呼称のルール
4.服装やメイク
5.お辞儀ハンコ
6.季節の挨拶や贈答
7.お酒の席でのマナー
8.お辞儀の角度
9.お茶を出すときのマナー
10.ノックの回数
リモートで仕事をしたり、オンラインで会議や営業をすることが普通になってきたりの今、確かに業種や職種によってはマナーの必要性は異なってくる。
そんな時代の変化が、このランキングに現れていると考えると、頷けなくも無い。
今までは上記のようなマナーを必要とする場面と職種や組織が多かっただけだ。
だから“数”に合わせて、そのマナーを知っておいた方がメリットが多かった。
◆無くす、より、どう残すかが重要
今後はどうなっていくのかはわからないが、まったくマナーが無くなっても良いかと言えばそうではない。
『無くす』より『どう残すか』が大事かと考える。
新入社員向けの研修時、「こんな細かいところまで訊いてくる?自分で判断できないの?」と思うことがある。
つまり、それほど「確信がないと不安」ということでもある。
『リモートの会議だから服装は部屋着でも問題ない。だからスーツ着用というマナーは不要』ではなく
『リモートでも、意識を仕事に向けて集中して会議を行う、そのために勤務時と同じスーツを着用しよう。仕事の意識を低下させないためにも必要なマナーだ』と考えていきたい。。
何でもかんでも無くしてしまってから、後で取り戻すのは大変なことだ。
現行のビジネスマナーが不変だとは全く考えていないが、不要だとは思わない。
良い形で、良い人間の心づかいとして、受け継がれるべきだと思う。
しかも、ビジネスマナーは『仕事の基本』の考えであることは間違いない。
◆ビジネスマナーをわきまえていないと、不都合が起こる
最近、リモートワークの弊害を目の当たりにする。
上司の目の行き届けかない所での、部下の顧客とのコミュニケーション全般だ。
電話の受け答え、言葉遣い、礼儀。
上司の目が届けば、間違いがあればそっとすぐに直してやることができるが、目が届かないというのは暴走の止めようがない。
最近は電話で、嫌な気分になることが多く、そうなれば、その企業への不信感が募ることになる。
表立ってクレームにはなっていないかもしれないが、顧客離れは進んでいるかもしれない。
新規の営業が取れていない一つの原因になっている可能性がある。
コロナのせいで営業が伸び悩むのではない、という一面も知っておくべきだ。
もし、ビジネスマナーの代替を考えるのであれば、【コミュニケーションマナー】がいいかもしれない。
もちろんビジネスマナー=コミュニケーションマナーなのだが、この時期【コミュニケーションマナー】というと、ピンとくるのではないか。
上司や会社が知らない間に顧客はどんどん離れているかもしれない。
新人の礼儀やマナーが非常識なためだ。
転職者、新入社員に、それを誰が教えてくれ、彼らは何を頼ったらいいのか?
ビジネスマナーの中で育った者として、その必要性は、実は今も変わっていない