禅に「看脚下(かんきゃっか)」という言葉があります。「足下を見なさい」から転じて「履き物をそろえましょう」と標語的に使われています。
しかし、真意はもっと深いところにあります。脚下とは自分の足下。自分の足下を顧みるとは「我が身」や「我が心」を振り返れ、自分が今どういう立場にいるか、よく見極めて事に当たれと言うことです。中国は宋の時代、臨済宗中興の祖、五祖法演禅師(ごそほうえんぜんじ)が弟子の克勤(こくごん)に問うた時の応えの一語です。
さて、本日はそんな『脚』についての話です。動物行動学者のデズモンド・モリスは「人の『動作と心が一致する箇所』は下肢、『足』に本心が一番表れやすい」と述べています。
男性がイスに座ったときの膝の開き幅は、肩幅くらいが好印象です。広く開きすぎると威張った高圧的なイメージになりますので気をつけて。女性は勿論、膝をつけて座るのがマナー。品があって素敵に見えます。また、男性も女性も折り曲げた膝の角度はスクエア(90度)を保つときれいに見えます。通勤の乗り物の中などで、意識してみてください。
3人で横並びに座ったとき、真ん中の人の膝はどちらに向いているでしょう?膝の向きは“好意のバロメーター”と言われます。人は興味を持っているときは意識しなくても上半身が相手に向き、それに連動して膝も相手に向きます。身体の動きは正直です。
脚は脳から遠いので、その動きを思い通りに制御させることは結構困難なことなのです。
また、視覚に入りにくい脚の動きは無意識の中で伝わってしまうといえるでしょう。例えば、テーブルやデスク、カウンターの下は自分も相手も見えないけれど、脚をきちんとスクエアにして相手のほうに向けてみると、不思議と礼節が相手に伝わるものです。視覚には見えないけれど、意識がきちんと相手に向くので誠実に話していることが伝わります。無意識の領域の中でも足元が整うと“品格”です。
さて、おまけですが、デズモンド・モリスは彼のデータでは、『心と動作が最も一致しないのは(本心が表れにくいのは)、“ことば”』と云うことです。なんだか“納得”ですね。